つい最近Model 200 Double ICを買ってしまい、とうとうSustainorを6台保有することになりましたGuitarstuffでございます🎊㊗
Rockman Sustainorという、SR&D社の中のRockmanブランドの中のプリアンプの1つではありますが、モデルが変わったり、アナウンス無しにリビジョン(内部の部品)がちょこちょこ変わったり、非常に奥が深い存在でもあります。
当初Rockmanの原稿でも書いて本でも出したいなと考えてはおりましたが、Sustainorだけでも(出版費用は別として)出せそうな勢いがしますw
Sustainorの機能とかトーンは前々から散々話したり、昨今は(下手くそ)動画とかをYoutubeなんかに上げたりしてるのですが、今回はそのバージョンや大まかな年代、仕様などを説明していきます。
Sustainorは確定事項として、正式に販売された製造年月日は1986年の1月とされてます。
それまでに費やした年月は4年とされており、つまり1983年、ヘッドホンアンプのRockman IIBが販売されてる頃と推測されます。
この頃のRockman IIBは、82年発売の同じくヘッドホンアンプのRockmanのEDGEモードに些か不備があり、それのアップグレードバージョンという名目で販売されてました。
因みに無印Rockmanを、アップグレード費用を払ってSR&D社に送ればモディファイしてくれるサービスも行ってたそうです。
しかしながら、この当時のRockman IIBは歪ませる方式がソフトクリッピングであり、後のX100やSustainor以降に採用されたハードクリッピング方式と異なっており、X100の開発に付随して進められてたと推測されます。
84年にX100が完成し、小型でありながら「プリアンプ+マルチエフェクト+キャビシミュ」の複合機としてBOSTONサウンドを、今までのRockman以上に近い音を奏でられ、世間では高額にもかかわらず(当時現地で約48,000円、日本国内正規品として68,000円)、大ヒットを飛ばしました。
そのX100からプリアンプだけを抜き出し、トーンをTom Scholz氏の地下スタジオでの録音やライブツアーに応える位クオリティを上げ、各種機能を山盛りに積んだのがSustainorという訳です(各機能は省略します)
つまり、84年のX100でハードクリッピング方式を採用した後、更に2年弱の月日を重ねてSustainorを完成させた事になります。
しかしながら、このSustainorもScholz氏のお眼鏡に敵わなかったのか幾度となくパーツの交換が行われたり、またDistortion Generatorでは基盤すら新しいものになったりと、プリアンプに対するこだわりが相当深かったように思えます。
ここからのお話ですが、今手元にある情報をもとに、Sustainorに絞ってその開発の経緯を書いていきます。
Model 100
最初期タイプ。
1986年の1月から1987年の4月まで製造されてるそうで、その数は凡そ11000台。
アメリカの各地域から優秀な技術者を掻き集め、4年の歳月をかけた努力の結晶の第一歩といえる涙ぐましい作品です😭
ヘッドホンアンプ類の大ヒットがブースターとなったのか、そのヘッドホンアンプのプロ用機材バージョンとして、Stereo Chorus/Delayと同時に発売されました。
BOSTONではRockman IIBやX100と共に、このモデルのSustainor(とStereo Chorus/Delay)がアルバムThird Stageでしっかり使われてます。
Model 100Aと200 Double ICの基盤。
ジャンパーが異なることろへ配線されたり、オペアンプの種類も違っているそうです。
Model 200の方がXPR寄りみたいです。
Model 100A
1987年の4月から9月までの約6ヶ月の間に約2000台製造された、Model 100のアップグレードバージョン。
このModel 100Aに関しては非常に不可解な点があり、約3000台製造されたとか、87年の3月から製造が開始され、最初のシリアルが「SP10811」なのも相俟ってModel 100と並行して造られた説もありますが(Model 100の総生産台数が11000な為)、個人的にはModel 100の生産を終了した直後のロットに100Aが入ってきたと今は考えてます。
確認の仕方としては、リアパネルのフットスイッチ接続部分の下に小さく表記されてます。
具体的な変更点を述べてるサイトはほぼ無く、大まかに言えば
「200は大掛かりな変更をされたのに対し、100Aはその足掛かり的な措置」
という感じですね🤔
そうなると前回の記事、
で書いたような、Model 100で顕著に感じられたモコモコとかなり籠ったような音を、ハイミッドを持ち上げる事で明るさと抜け感を足したモディファイかなと考えてます。
(XPRaやXP-100aのようなトーン変更とはベクトルが違うみたい🧐)
BOSTONではScholzは使わず、Gary Pihlが一時だけ使った後すぐ200に移行したそうです。
Prototype Model 200
1987年の10月以前にテストとして開発されたModel 200で、製品版との音質での違いは不明。
特徴的なのが、フロントパネルのデザインはModel 100を踏襲しており、またDistortion/FilterセクションのThresholdのLEDが2つ搭載されてます。
6台試験的に作られたそうですが、市場には出回ってません。
Model 200
1987年の9月から1989年の5月まで、約5700台製造されたバージョンです。
全体的に回路が見直され、コンプレッションの掛かり方やトーン調整、特に高域においてModel 100(A)には無かった高い帯域を付加するなど大幅なテコ入れがされてます。
またディストーションのレベルを落とし、フィードバックが起きないような補正もされてます。
シリアルは19570までとされてますが、一説では193xx番台に後述のDouble ICバージョンが存在し、この辺りもファンサイトでは曖昧となってます。
BOSTONでは87年以降のツアーでコレが主役となります。
大きな違いとして、フロントパネルのデザインが主に挙げられます。
Model 100と比べると文字や図が比較的シンプルになって分かりやすくなったような気がします(笑
またパネル下部のロゴが青から白に変わり、これも見分ける為の要素となってます。
リビジョンの違いが多く、初期モノはノイズゲートのセクションが「GATE」表記に対し、後期型は「SMART GATE」表記になってたり、内部が色々弄られたりしてますが、サウンド面に関しては基本Model 100と200で大きな差があるくらいで、200の中でのリビジョンではそこまで大差は無いです。
Sustainorのフロントパネルはこのように曲がってる物も多く、ネジ止め部分のヒビや割れの一因となっている。
Model 200 REV.19, REV.20
Sustainorの中でも最も価値が高いとされてる個体です。
何故なら、これらはBOSTONのTom Scholz氏とGary Pihl氏の為だけに制作された製品の為です。
Model 200を基軸とし、Auto CLNセクションにいくつかのパーツを追加して改善し、後の製品版であるDouble ICに繋がるプロトタイプのLead Leveler Circuitを施し、Preamp Gainセクションにもテコ入れをし「Pre Treb」という表記でやや異なった機能に変更されてます。
またコピーライトの表記が、従来のモデルだと「©️1985 SRD」なのに対し、これらのリビジョンのみ「©️1989 SRD」となってます。
まずAuto CLNは従来のものより強化され、EDGEモードでギターのVolを絞った時に出せるクリーンサウンドの音量・音圧の向上がなされてます。
次にPre Trebですが、10kΩの抵抗を加える事によりギターからの信号で低域をカットしてコンプレッサーセクションに出力するものらしいです。
Pre Trebを上げれば、より低域がカットされるみたいです。
またDISTモードとEDGEモードで11k〜12kHzのブーストがされてるそうです。
プロトタイプのLead Leveler Circuitは従来のものとほぼ同じ機能みたいです。
制作台数はREV.19が2台で製造年月日は1989年3月17日でシリアルはSP18987、REV.20が13台で製造年月日は1989年4月20日でシリアルはSP19191とされてます。
中古市場では5年前で20万を超えてたので、もし現在また出品されれば、それ以上の価値が付くと思われます。
左が100A、右がDouble ICのコンデンサ。
左が105℃まで、右が85℃まで耐えられる仕様なので、100Aの方が優れてるものらしい。
しかしながら、発売から30年近く経ってるので、交換しておかないと最悪破裂してレギュレータが壊れ、二度と動かなくなる可能性もあるので、Rockmanでなくとも古い機材を持ってる方は交換をオススメします。
Model 200 Double IC
立ち位置としてはModel 200と同等ですが、コレクターの間では区別されてるリビジョンです。
上述のREV.20のLead Leveler Circuitがプロトタイプなのに対し、こちらはICを2つ重ねてモディファイした完成型となります。
製造年月日は1989年5月12日からでシリアルはSP19291が初出となります。
このDouble ICはREV.20での改善点を一部継承し、Model 200のAuto CLN機能の向上と、コンプレッサーのリリース速度が向上してます。
REV.20ではハンドメイドでそれらの改善をしてましたが、Double ICは追加したICでそれらを担ってるという感じです。
コンプレッサーのリリース速度の向上は、ピッキングの反応がより良くなり、ハンマリングやタッピングの際に輪郭が向上してもたつかない等の利点があります。
このDouble ICに関しては、生産台数は約1700台、公式での生産終了時期が1992年の5月、最終シリアルはSP21120となってますが、一部の代理店向けに少量のみ追加生産してたみたいです。
公式での生産終了後に日本のモリダイラ楽器に輸出してた分は、製造年月日が1992年8月18日、シリアルはSP21202〜SP21216の計15台が当方では確認されてます。
手持ちのSustainor 6台です。
上からModel 100, 100A, 200, 後の下3つは全てDouble ICとなります。
高値の付くDouble ICにもプレミアの段階があり、シリアルがSP21xxxから特にレアだとされてます(自慢ですが俺が持ってるのはSP21216ですw)
簡潔にモデルの違いを説明すると、
100:X100からプリアンプ部分を抜き出し、レコーディングやライブ向けに機能を大まかに拡張し、より音作りを綿密に出来るようにしたもの。
100A:100の段階では改善点が多々見られたが、具体的な対策がまだ見つからず、取り敢えずハイミッドを持ち上げて籠るトーンを解消したという感じ?
200:コンプレッサーやフィルターのセクションを大幅に改善し、100ではカットされてた超高域を僅かに出力して明るさや抜け感を改善し、歪量を減らしてフィードバックを起こしにくくしたもの。
200 REV.19 or 20:Preamp Gainの箇所が、低域を減らした状態でコンプに入力させるPre Trebという機能になり、更にDISTとEDGEに11〜12kHzの超高域を追加し、従来よりかなりトレブリーな音にしたもので、同時にAuto CLNの向上もされてる。
また実験段階のLead leveler Circuitも搭載され、コンプレッサーのリリース速度の向上がされてる。
200 Double IC:REV.20からLead Leveler CircuitとAuto CLNの向上をさせたアップデートを継承し、それらを全て二段式のICによって賄ってるもの。
他社のエフェクターでも昨今は「Ver. xxx」のようにバージョンの違いなどが散見されますが、それらは実際音を聴いて「ああ、これはこういう音なんだな」という風に判定するのが主流ですが、ことSustainorに関しては大体のアップデートが明確に記されてる事が多いです。
80年代は海外の名だたるアーティストが多数使用し、日本でも80年代終盤から90年代初頭にかけて数々のミュージシャンが愛用したとされるRockman、とりわけSustainorとXPRは昨今また人気がぶり返してきましたが、ディスコンになって28年経った現在でも分からない点が多く、そういった意味でも魅力的な機器だと思います。