Guitar Stuff Blog

今まで使ったギターアンプやエフェクターを紹介したいと思います。

20190918 Rockmanのコーラスやエコー(ディレイ)の違い

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引き続きRockmanの話題に触れていきたいと思います🐬

昨今Rockmanの歪がやたら注目されてますが、Bostonと言えばディストーションやクリーンサウンドにコーラスやエコーを乗せた、宇宙空間的なサウンドが特長で、Bostonたらしめてる重要な要素と言えます🧐

 

どうやらBostonの1stアルバム「幻想飛行」ではEventide H910ハーモナイザーが使われており、これが二重に聴こえるギターサウンドの根幹みたいです。

(恐らくボーカルやキーボードにも使われてると思います)

一部では、レギュラーからデチューンしたギターを重ね録りしたとか、2つのアンプに出力する際に片方のシールドを超長くして遅延効果を狙ったとか、指板にホッチキスの芯を刺しまくって弦に触れるか触れないかの所でハーモニクスを出してたとか言われてますが、どうやら一番有力なのはH910のようです(笑

(でも最近の御大のマイティマウスのステッカーが貼られてて、ブリッジにWalk Onのジャケットの絵柄が使われてる魔改造レスポール(笑)にも秘密がありそうです🧐

 

2ndアルバム「Don't Look Back」の頃からギターサウンドに掛かってるダブラー効果にやや畝りのようなものが感じられ、俺の想像ですが多分コーラスエフェクターのプロトタイプが使われてるのかなと思ってます。

 

 本格的に自社のStereo Chorus/Delay(以SCD)が使われ始めたのは3rdアルバム「Third Stage」からで、「Amanda」では恐らくX100のプロトタイプ、それ以外の曲に関してはX100とハーフラックモジュールを併用してレコーディングされたものだと推測してます。

それ以降のライブやスタジオアルバムの製作においては、Stereo Chorus/Delay、Stereo Chorus(以下SC)、Stereo Echo(以下SE)、XPR内蔵モジュレーションを使われてるそうです。

(最新のアルバム、「Life, Love & Hope」では"古い機材を持ち出した"と御大がインタビューで述べてますが、まさかのH910や改造Marshall。。。(°m°;)ゴクリ…

 

Rockmanのコーラスの概要

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Scholz氏は当初「ダブラー」という名称でH910やプロトタイプのコーラスエフェクターを使用してました。

これは一般的なコーラスの効果ではなく、音を二重に聴こえるようにするのが目的だった為です。

 

1982年に登場したRockmanですが、この頃のコーラスは揺れも深さも固定、Scholz氏が理想とした「ダブラー」として機能する為に特化したものとなってます。

回路上は片方の音はドライ音で弱めのリバーブが掛かり、もう片方はショートディレイとLFOを組み合わせたエフェクト音を出力する空間合成式のコーラスではあるんですが、聴覚上だと左右両方揺らしてます🧐

両方を絶妙に揺らすことによって複雑で立体的なコーラスになってるように思えます。

 

1985年に登場したSCDは更に音を二重に聴かせる為の措置がなされてます。

Rockman.fr - Rockman Stereo Chorus/Delay Review」のサイトを翻訳したんですが(笑)、

コーラスのエフェクト音の方はBBDで20〜40ms遅らせた音を送り、20〜25msの間で変調させ、それをドライ音とミックスして、あたかもギターが二重に聴こえるような錯覚を起こさせるようになってるそうです。

 

で、アウトプットのステレオモードは通称「ステレオイメージ」と呼ばれ、片方からは通常の、もう片方からは遅延した音(さっきの20〜40ms)を出力して擬似的にステレオサウンドを作り出してるという事らしいです(間違ってたらゴメンなさい😆)

モノラルモードは通常の音とディレイ音をミックスさせたものになります。

 

ロングコーラスは、ディレイタイムを20msから40msにし、ディレイの効果をより分かりやすくし、二重に聴こえる感じを演出します。

 

XPRのコーラスはX100のものを拡張した感じで、Sweep Stopを含む5段階の揺れの速度とモノラル or ステレオの切り替えが出来るようになってます。

Rockman独特の立体的なコーラスは顕在ですが、ハーフラックのような強い癖は無く、その代わりに前者同様音に芯が残りディストーションでもクリーンでも非常に使いやすいコーラスではあります。

但しやはりMIDI制御前提のプリセットなので詳細な設定が出来ず、他のコーラスエフェクター(Rockmanは勿論、T.C.E SCF、Maxon CS550、Fulltone Tri-chorus辺りが人気)を組み合わせて使われる事が多い傾向にあります(笑

 

SCD v.s. SC

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SR&Dからは単体で2種類のコーラスエフェクターが発売されてました。

具体的にはSCDがディスコンになり、直後にSCとSEが発売されたという感じです。

(これに伴いSustainorもModel 100(A)から200になった)

 

まずSCDのコーラス部分とSCの技術面での違いは、使われてるBBD素子の違いがあります。

SCDはMN3005 + MN3101、SCは2個のMN3007 + MN3101です。

面白いのは、X100ではSCと同じMN3007でコーラスを構成してるんですが、SCDではMN3005が搭載されてます。

MN3005の方が一般的にはディレイタイムが若干長く設定出来るのと、当時のコストが割高という点が挙げられます。

一般的なアナログコーラスに使われてるBBDはMN3007が圧倒的に多く、ディスコンの現在ではMN3007の他社製品が採用される事が多いです。

SCで何故2個のMN3007が搭載されてるかと言うと、フットスイッチでロングコーラスに切りかえた際のノイズ(Woosh Sound、聴いた感じフュッ!という笛のようなでかい音)を鳴らさなくする為です。

 

またSCではシステム面で拡張され、フットスイッチ限定ですがSweep Stopの機能が付けられました。

これはコーラスにおけるLFOによる揺らぎ効果を消し、ショートディレイのみ適用するもので、音をドライかつ二重に聴かせる為の効果が得られます。

 

では実際音の違いはどうなのか?

 

2年前くらいに書いた記事は綿密には比べてはいなかったのですが、実験の結果結構違いは見受けられました😱

 

過去の記事のおさらいも兼ねて色々書きますが、まずSCDは音が引っ込み、SCでは改善されてます。

恐らくインプットゲインの調整か、中の回路を見直して減衰する箇所を修正したか、ディレイセクションを省いた事で劣化が抑えられたかのどれかだと思いますが、具体的に書かれた記事が見当たらないので憶測の範囲で留めてます(笑

 

またSCDの方がSweep Speed(一般的なコーラスで言うSpeedやRateに当たる箇所)が全体的に速く、エグみがやや強いです(それでも一般的なコーラスに比べたら生易しいけどねw)

SCのMAXでSCDの1/2位です。

 

またLong Chorusモードでのディレイタイムはどちらも一緒の40msだそうですが、SCDの方がやはりディレイ音が強く、やはり超ショートディレイが掛かってるように聴こえます。

これにより、SCの方は原音の芯がくっきりと残ってますが、SCDはディレイ音が主張してやや音がぼやけ気味になってるような気がしますね😓

 

結論を述べると、SCはギター1本を立体的なサウンドに変化させ、SCDは(SCと比べると)強烈な揺れとディレイ音によるユニゾン効果でギターを2本弾いてるかの様に効かせるという効果を醸し出し、使用用途はやはり違くどちらも個性を強く主張してます🤘✨

使いやすさはSCですね(笑

 

SCD v.s. SE

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お次はディレイでの勝負。

SCDはMN3005なのに対し、SEはなんとMN3007とMN3005を2個ずつ搭載してるBBD要塞だという事がRockman.fr - Rockman Stereo Echo Reviewによる記事で判明しました(笑

記事によると、当時の一般的なアナログディレイはク○なものが多く、(安い早い美味いw)デジタルディレイに移行するメーカーが殆どだったのに対し、SR&Dの渾身のSEはテープエコー張りの分厚くウォームなディレイサウンドをアナログデバイスで再現し、Rockmanとしての価値のみならずアナログディレイの傑作として人気が高いとの事😭

またSEの根底にあるのはSCDのディレイセクションでSEの大元とも言えますが、SCDにおけるディレイはSR&Dも当時そこまで力を入れてる訳ではなく、あくまでBostonでのエコーサウンドとして必要最低限機能させる範囲に留めてるという感じです。

 

システム面では、まずフィードバックの値は一緒で1〜∞となってます。

ディレイタイムに大きな違いがあり、SCDはショートモードで20〜60ms、ロングモードで50〜200msとなっており、左右のディレイタイムは一緒です。

SEでは大規模に開発され、ショートモードの削除、左が75〜300ms、右が125〜500msとなってます。

丁度左の値を5/3倍した値が右に当てられ、左右でディレイタイムが異なります。

これによりステレオでの奥行感、分厚い音の壁のようなサウンドを構築してます🏛

 

アウトプットは、SCDはステレオモード2種とモノラルモード2種となってます。

「Wide Stereo」は左は完全にドライ音、右はエフェクト音となっており、通称「ステレオイメージ」という擬似的なステレオ効果となってます。

「Normal Stereo」は左側に小さ目のディレイ音を足す事で、Wideモードに比べ左右の擬似的な開きをやや狭くしてます。

「Equal Mono」と「Subtle Mono」はモノラルモードのディレイで、ディレイ音の強さの違いに留まってます。

 

一方SEでは「PAN Select」という、ステレオシステムで使えと言わんばかりの方式が取られてます(笑

具体的には、

 

「<Echo> />Main<」は左側は「ドライ音+エフェクト音」で右側がエフェクト音のみ(つまり左より音が遅れ減衰してる)

 

「<Echo>/<Main>」は両方とも「ドライ音+エフェクト音」で左右のディレイが主張してる

 

「Echo>/<Main」は左側は「ドライ音+エフェクト音」で、右側はエフェクト音のみだけど、そのディレイ音の音量が極小から徐々に大きくなり、ピークに達した後で減衰していく、聴覚上左から右にディレイ音が流れるような効果

 

となってます。

またエフェクトの音量もSCDでは両方同時なのに対し、SEでは左右個別に設定出来るようになってます。

 

早速実際の音を確かめてみました😆✨

 

結論から書きますと、やはりSEはSCDの流れを汲みつつ大幅に拡張されてるという印象でした。

双方温かみのあるディレイなんですが、やはりディレイ音の分厚さがSEの方が強いです。

またステレオ効果においてはSCDでは活かしきれておらず、SEの左右異なったディレイタイムによる効果がやはり音の奥行感、広がりを表現し、更にPAN Selectでその表現力を強めてます。

ただ、SCDのディレイもステレオモノラル関係無く充分奥行感などが感じられ、「コーラスのオマケ」という感じは全く無く、コレ単体で売っても高品質なアナログディレイとして実戦に投入出来ますね(Bostonでも使われたわけだし)👍✨

 

またSCDがSEに勝てる要素として、「スラップバックディレイ」が出せる事です🤘😡🤘

SEは左右のディレイタイムが異なり、かつ

最低値である左が75msなのに対し、SCDは双方20msまで下げられるので、超ショートディレイによる金属的な立体感が出せます。

丁度Sweep Stopを掛けたSCと同じ効果ですが、こちらはフィードバックを大幅に増やせるのでブリンブリン効かせられます(笑

(SCDのスラップバックディレイ+SEの超宇宙空間エコーで気分はAcross The Universe○_ゝ○

 

まとめ

SCもSEも根底にはSCDがあり、SCは癖を弱めて扱いやすく、SEは表現力を高める方向に分裂させたという感じです。

 

BostonでもSCDとSCは曲やツアーによって使い分けられ、キャラがそこそこ違うので一概にどちらが優れてるかを決める事は出来ないです😓

ただ言えるのは、X100やXPRも併せてRockmanのコーラスは極めて特殊、ディストーションと同等かそれ以上に再現は難しいかなと思います。

何故なら、

「Rockmanのコーラスを掛けただけで、他社のアンプやエフェクターの歪がBostonぽくなる」

という効果があるからです😱

 

SEはやはり左右に振った異なるディレイタイムが特徴的で、これがScholz氏自身が使ってるEchoplex EP-2のサウンドのような温かみや厚み、奥行感などを再現してるのかなと思います。

SCDもBostonぽいディレイサウンドなのは確かですが、SEはそれが強烈にエンハンスされてます。

X100やXPRのものはほぼリバーブ効果に留まっており(XPRの「リバーブ」はデジタルではなくBBDのショートディレイによる擬似的なもの)、幻想的な印象を与える補助的な役割が強いです。

 

ディストーションのみならず空間系でも名機を残すSR&Dはやはり偉大ですm(__)m

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